難問題集が解けるようになる日

コメント欄でいただいたコメントに返信を書いていたらあまりの長文になったので、コメント欄ではなくここで返信させていただきます。

通りすがり 2011/12/03 22:18
順調に強くなってますね凄いです !
ちょっと質問なのですが、ひよこの作者様の技術ならコンピュータ将棋の苦手な寄せの入口の発見は可能になりますか? 難問題集なんかをやらせてみると、数手進めてやらないと正解が分からないみたいなんですが、いかがでしょうか?

数手進めれば正解がわかる場合というのは、読みの深さ(≒読むための時間)が足りていないということなので、PCのスペックが上がれば自然とそういう問題も解けるようになります。

PCスペックが上がらずともソフトの改良によってそういう問題が解けるようになるかというのがご質問の意図だと思うのですが、これは、ソフトの改良が一概に難問題集の正答率アップにつながるとは限らないです。

なぜなら、難問題集は、tacticalな(戦術的な)問題が多く、実戦に現れないような筋がたくさん出てくるからです。ソフトの改良とはいわば実戦に向けてチューンし、実戦での勝率アップを目標とする場合がほとんどですから、ソフトを改良すればするほど、そういったtacticalな問題は解けにくくなります。

以上は、私の持論ではなく一般論かと思います。


ただし、dfpnによる詰将棋探索などはそういう戦術的な問題のうち、詰み/不詰めが絡む場合になら有効に作用することが多々あるので、そういう終盤向けの改良は、終盤の難問題に対しては正答率アップにつながるのではないでしょうか。

あとは最近の研究では詰将棋のみならず必死ルーチンの研究もさかん(?)で、必死ルーチンを搭載すれば、その手の難問題のうち、必死が絡むケースの正答率が目に見えて上がるでしょうね。

ただ、dfpnの詰将棋ルーチンが実戦で使い所が非常に難しい(たとえばBonanza6ではdfpnの詰将棋ルーチンを実装してあるにも関わらず、通常の探索時にはそれを使用していません。クラスター化のときに補助的にしか使っていません)というのはあって、必死ルーチンはdfpnの詰将棋ルーチンよりさらに使い所が難しいでしょうから、必死ルーチンを組み込んだコンピューター将棋プログラムというのが本当に強いのかどうかはいまの私にはよくわかりません。

それとは別に、dfpnの詰将棋ルーチン、呼び出すタイミング、呼び出すときの探索資源配分が非常に難しいのですが、ひよこカルロ将棋neoではそのへん比較的うまくいきまして、dfpnを使わなかったとき(R2050相当?)よりも50か100ぐらいRがあがっているのは、主にそのおかげだと思います。

週刊ひよこ将棋のほうは、まだfloodgateでの対戦数が少なくよくわかりませんが、あまりうまく行っていない印象は受けます。これは、評価関数がそこそこまともですと、自然と詰みやすいほうを優先して探索するようになり(王の危険度みたいなのを評価するので)、普通に探索していれば詰みを発見できるからだと思います。

また詰将棋ルーチンでは、必死やN手すきみたいなのを判定できませんので、結局は普通に探索するほうが効率的にも優れているというのはあるのかも知れません。しかし、これに関しては私はまだ始めたばかりですので、よくわかりません。

ともかく、このようにdfpnの詰将棋ルーチンをうまいタイミングで呼び出して、終盤を強化し、総合棋力をアップさせるための研究というのはまだこれからでして、同様に、必死ルーチンをうまく通常探索に活用できるようになるのも、まだまだこれからだと思います。

そのへんの改良がうまくなされれば、いま「数手進めてやらないと正解が分からない」ような難問題も(終盤のものに限って言えば)現行のPCで解けるようになるのでしょうね。

とひとごとのように書いていますが、これらは私自身のこれからの課題でもあるので、頑張ります!!