プレマッチは米長会長の惨敗

注目された米長会長の第2手目は62玉でした。62玉は私の予想にもあった手なので「米長会長、定跡外しを相当研究してきたな」と思いました。感想戦によりますとこの手は米長会長がとある有名なコンピューター将棋開発者に教えてもらった秘手だそうです。

ただ、その後の変化は全く教えてもらっていなかったそうで、米長会長が序盤で争点を作ってしまい(74歩〜73桂としたために65歩の仕掛けを与えた)、一方的に攻められていいとこなしに終局しました。


以下に棋譜を貼っておきます。

開始日時:2011/12/21 19:00
棋戦:電脳戦
先手:ボンクラーズ
後手:米長邦雄永世棋聖

▲7六歩 △6二玉 ▲6八飛 △5四歩 ▲3八銀 △4二銀
▲4八玉 △5三銀 ▲3九玉 △6四歩 ▲6六歩 △7二銀
▲9六歩 △6三銀 ▲7七桂 △7四歩 ▲7八銀 △7三桂
▲5八金左 △7二金 ▲4六歩 △9四歩 ▲6五歩 △同 桂
▲同 桂 △同 歩 ▲同 飛 △8四歩 ▲7五歩 △8三金
▲7四歩 △同 金 ▲2五飛 △3二金 ▲7五歩 △6四金
▲7四桂 △同 銀 ▲同 歩 △同 金 ▲6七銀 △6四歩
▲7六銀 △7三金 ▲6五歩 △7四歩 ▲6四歩 △同 銀
▲6五歩 △5三銀 ▲6四銀 △同 銀 ▲同 歩 △同 金
▲9七角 △6三歩 ▲6五銀 △7三銀 ▲4一銀 △3一金
▲2三飛成 △5三玉 ▲6四銀 △同 歩 ▲3二金 △3四銀
▲2二龍 △同 金 ▲7一角 △6三玉 ▲8二角成 △同 銀
▲2二金 △7五歩 ▲3二飛 △9二飛 ▲5二飛成 △7四玉
▲7六歩 △4四角 ▲7二龍 △7三桂 ▲7五歩 △6五玉
▲6七金
まで85手で先手の勝ち

感想戦によりますと、米長会長は第二手目の62玉は自宅のボンクラーズ(米長会長の自宅に設置してある)で20局ぐらいは試してきたそうですが、銀を79に置いたままの77桂は初めてだったとか。

もしかすると米長会長の自宅のボンクラーズと今回のボンクラーズとではマシン構成が違うのかも知れません。今回のボンクラーズのほうは深くまで読めたため、ボンクラーズが何か速攻で仕掛ける手順を見つけたのかなと私は思いました。


コンピューター将棋相手に下手に定跡を外して有利になる変化を見つけても、PCのスペックが上がったりクラスター化で探索量が増えたりしますと、以前通用した変化が通用しなくなることは多々ありまして、通用しないだけならまだしも、コンピューター将棋側に定跡を外した手自体を的確に咎められることもありうるのでしょうね。

そう考えますと、米長会長にわざと探索量の少ない、PC1台分相当の弱いボンクラーズを提供し、米長会長に「コンピューター将棋の弱点見つけたり!!」と思わせておいて、本番では(会場は2600Wまでと言っていたので)8台ぐらいのクラスター化したボンクラーズを用いた場合、ボンクラーズ開発者の伊藤さんが意図せずとも「ボンクラーズが1PCのときに見せた弱点は実は弱点じゃありませんでしたー!」というハニートラップが自然と出来上がっているのかも知れません。


まったくこれでは定跡を外して勝つのも楽ではありませんね。